地方公務員試験の面接対策

 公務員試験対策の中でも特に重要なのが、面接試験対策です。ほとんどの自治体で筆記試験より面接試験の方が配点が高く、採用基準がより人物重視になっていることが見て取れます。
 とはいえ、公務員試験を初めて受ける方からしたら、一体どんなこと聞かれるの?どんな準備をしていけばいいの?と思うでしょう。また、過去に受けたけど筆記試験は大丈夫なのに面接試験で落ちてしまった、という方もいるかもしれません。

 

 公務員試験の面接は、いたってオーソドックスで、しっかり準備すればなんら恐れることはありません。また、志望動機やその自治体でやりたい仕事を変えれば、併願先の面接でもそのまま使えます。つまり、公務員試験の面接は再現性が非常に高く、一つ合格できる面接対策をしておけばいくつもの最終合格を勝ち取ることができます。逆に、その準備が不十分だと、いくつ併願しても一つも合格することはできません。合格するには、”コツ”があります。

 

面接対策はいつからすれば良いか

 具体的な面接対策の話に入る前に、そもそも面接対策はいつから始めれば良いと思いますか?ほとんどの受験生が、択一試験が終了した後とか、もっと遅い人は一次試験の合格が出てから始める人もいます。
 もちろん、それでも最終合格できる人はいます。面接試験に慣れている人や、よほど人間的に公務員に適した人であれば、それも十分可能でしょう。しかし、より確実に最終合格を掴み取りたければ、もっと前から始めておくべきです。

 

 私が最初に面接対策に着手したのは、エントリーシート作成時です。

 私は公務員試験を30歳の時と35歳の時の2回受けて2回通っていますが、初心者だった1回目の時でいうと、

 

10月 択一試験勉強開始
2月 模試受験
4月 エントリーシート提出 ←ココ
5月 小論文対策開始
6月 択一試験
7月 小論文試験、面接1回目
8月 面接2回目
9月 最終合格発表

 

 4月のエントリーシート提出時に、最初の面接対策を始めました。もちろん、始めたのがその時期なだけで、その後ずっとやっていたわけではありません。この頃はまだ、

 

・志望動機
・それまでの経験(学生、社会人含め)
・その自治体で取り組みたい仕事
・その他の想定質問を少々

 

を考えていた程度です。しかし、この作業をやっているかいないかの差は大きいです。

 

 なぜエントリーシート作成の段階で面接対策を始めるかというと、理由は次の2つです。

 

  1. エントリーシートに「志望動機」や「採用されたら取り組みたい仕事」などの項目があるから
  2. 面接試験で聞かれる質問内容をこちらから誘導するため

 

 1つ目の理由は想像しやすいと思います。
 エントリーシートの中身は自治体によって違いますが、多くの自治体で「志望動機」「これまでの社会人経験での実績」「過去に力を入れて取り組んだこと」「もし採用されたら取り組みたい仕事」などが、記入項目として入っています。そのどれもが面接試験でも聞かれそうな定番中の定番の質問なので、この時期から回答を用意しておいて、それを文章にすればエントリーシートも作成できるということです。また、エントリーシート提出から最終面接までは3〜4ヶ月ほど開くこともありますが、答える内容を一致させるためにも、この時期に面接とエントリーシートの両方を見据えて回答を用意しておくとスムーズに対策できます。

 

 2つ目の理由は、なかなかやっていない受験生も多いと思います。
 エントリーシートの具体的な作成方法についてはまた別の記事で紹介しようと思いますが、エントリーシートは「単なる申込書」ではありません。面接官はエントリーシートを見ながら「へぇ〜、この人はこういう人なのかな。じゃあこれ突っ込んで聞いてみよう」と思うわけですから、エントリーシートは面接試験内容に直結する大切なツールになります。これを利用して、面接の質問をこちらから誘導することができます。

 

 例えば、ある受験生が、職場ではリーダーと新人の中間くらいのポジションで、新人教育しながらリーダーのサポートもする立場の人だったとします。リーダーからも頼られ、新人からも慕われ、時には落ち込む若手職員を励ますこともできる、職場には欠かせない戦力だったとしましょう。
 当然、面接試験ではそのあたりをアピールしたいところです。

 

 エントリーシートでは、全てを書く必要はありません。面接試験の布石となるような一手を簡潔に記しておくことが大切です。

 「私は職場の目標を理解し、チームみんなで協力して仕事に取り組むことができます。リーダーのサポートをしつつ、若手職員の教育も任せられることが多く、そうして目標が達成できた時はやりがいと達成感を感じることができました。」

 記入欄の大小にもよりますが、内容的にはこれくらいでも良いと思います。そしてこの時、同時に面接対策もするのです。

 

これを元に聞かれそうな質問を挙げると、

 

  • リーダーをサポートする上で、意見が合わないことはありませんでしたか?
  • 若手職員の教育をする時は、どのようなことを心がけていましたか?
  • 丁寧に教えてもなかなか仕事がうまくできない若手職員がいたらどうしますか?
  • 若手職員がリーダーの言うことをなかなか聞かない時はどうしますか?
  • 今まで達成した目標の中で、一番嬉しかったのはどのような目標ですか?
  • 懸命に取り組んだのに達成できなかった目標はありましたか?その時どう思いましたか?
  • もしあなたがリーダーになるとしたら、どのようなチームにしようと思いますか?
  •  

・・・などなど。挙げればキリがないくらいです。
 たった数行のエントリーシートの内容から、これだけの質問が想定されるわけです。そのきっかけとなる資料が、エントリーシートなのです。最初の面接対策は、ぜひエントリーシートを作成する時に、自分が書いた内容から派生させて想定質問を考えてみてください。
 そして、先ほども書きましたが、これは一度作っておけば、どの自治体を受ける時にもそのまま流用できます。限られた時間の中で最終合格までを見据えた対策をするためにも、ぜひエントリーシート作成時から面接試験のことを想定しておいてください。

 

「自然体で臨む」と「準備をしない」の違い

 面接試験は、確かに「自然体で臨んで素の自分をさらけ出す」と言う側面もあります。緊張しすぎて何も話せなくなっちゃうより、ある程度リラックスして臨んだ方が良いです。・・・が、それは面接官がちゃんとそういう空気を作ってくれるし、緊張している受験生も実力を発揮できるように、ある程度和やかに進めてくれます。

 面接試験では、自分の話した内容を面接官に「納得」してもらう必要があります。うわべだけの回答を並べても必ず見抜かれます。「リーダーシップがあります」とか「協調性があります」とか言っても全く納得してくれません。そう思わせるだけの具体的なエピソードが必要です。そして、そう言うエピソードというのは、面接中に聞かれてとっさに出てくるものではありません。あらかじめ、「これをアピールしたい時にはこのエピソード」というふうに、準備をしておく必要があります。

 

 また、志望動機ですが、これについてはまた考え方が分かれます。

「どんな理由でうちの自治体を受けようと思ったのか、本当にうちを心から志望しているのか、しっかり見極めたい」

と思って聞く面接官もいれば、

「志望動機なんてみんな似たり寄ったりなことを言うだけだし、さすがにみんな準備してきてるから、そういう準備万端な回答はさっさと吐き出させて、その後の準備してなさそうな質問をぶつけてどう回答するかが聞きたいんだよね」

と言う位置付けで聞いている面接官もいます。
居住地から遠い自治体や、自分と縁もゆかりもなさそうな自治体を受けた場合は前者が多く、自分が住んでいる自治体を受ける時などは後者が多いように思います。

 

 面接試験は、その人の素の人間性を見たいという側面もありますが、あまりに準備不足で言葉に詰まってばかりいると、「事前にしっかり予測したり準備したりすることができない人なのかな?」という印象を持たれかねません。

 

合格する想定問答集の作り方

 面接試験対策に欠かせないのが、「自己分析」と「想定問答集作り」です。
自己分析については、各面接対策本にも書かれていますし、想定問答集をいっかり作ろうとすると結局知らないうちに自己分析がバッチリできているケースも多いので、ここでは想定問答集の作り方に重きを置いて書こうと思います。

 

面接試験で聞かれる質問を大きく分けると、以下の3通りあります。

 

  1. エントリーシートの内容からの質問
  2. エントリーシートとは関係のない質問
  3. それぞれの回答からさらに突っ込んで聞いてくる質問

 

1.エントリーシートの内容からの質問

 先ほど「面接対策はいつからすれば良いか」の項でも書きましたが、数行のエントリーシートの内容から、いくつもの想定質問が考えられます。まずはそれを全部書き出します。全く見当がつかないという方のために、いくつか例を挙げておきます。

 

志望動機

  • なぜ民間企業ではなく公務員でないといけないのか?
  • なぜ国家公務員ではなく都道府県(あるいは市町村)でないといけないのか?
  • なぜ他の都道府県(市町村)ではなくその自治体でないといけないのか?
  • 採用されたらどのような仕事に従事したいのか?

これまでの経験

  • どのような仕事をしてどのような実績があるか?
  • 仕事を通じて何を身につけてきたか?
  • (過去に転職歴があれば)なぜ前の会社を辞めたのか?
  • 民間企業での経験を公務員としてどう生かせると思うか?
  • うちの自治体があなたを採用した時のメリットは?

人間性、人物像

  • 自分の性格の長所は?短所は?セールスポイントは?
  • 短所の改善のために心がけていることはあるか?
  • その短所が災いして何か失敗したことはあるか?それはどう乗り越えたか?
  • 長所が生きたエピソードは?
  • あなたは周りからどのような人物と言われることが多いか?

 

2.エントリーシートとは関係のない質問

  • 休日はどのようにして過ごしているか?
  • ストレス発散の方法はあるか?
  • 趣味や特技はあるか?
  • 最近気になっているニュースはあるか?それに対するあなたの意見は?
  • うちの自治体に対してどのようなイメージを持っているか?
  • 理想の上司像は?
  • 希望以外の部署に配属になったらどのようにモチベーションを保つか?
  • うちの自治体が抱えている課題とその改善案を一つ挙げてみて?
  • 働きやすい職場とはどのような職場だと思う?

 

3.それぞれの回答からさらに突っ込んで聞いてくる質問

これは、1.2.で作成した自分の回答から、自分が面接官ならそこからさらにどんな質問をしたいか?を考えて書き出していきます。

 


 

 想定質問をひたすら列挙したら、あとは回答を作成していきます。その際、常に意識しておくべきことがあります。

 

  1. 一つの回答は30秒以内で話せる程度の量にすること
  2. 質問の答えになっていること 
  3. 具体的なエピソードを交えること
  4. 失敗談や苦労話はそれだけに終わらず、必ず「それをどう乗り越えたか」「そこから学んだこと」も一緒に話すこと

 

 以上4点を意識するだけでも、だいぶ合格に近い回答を作ることができます。
2番目は「え?当たり前でしょ?」と思うかもしれませんが、私が入庁後に面接官経験のある上司に聞いたところ、しゃべっているうちに話が逸れてしまい、結局質問の答えになっていない回答をする受験生が意外と多いそうです。たまにスポーツの試合後のヒーローインタビューで、「今日の勝因はどんなところだったと思いますか?」と聞かれているのに「今日は何としても勝ちたかったので勝ててよかったです」って答えている選手がいるみたいな、そういうやつです。

 

4番目は最も重要です。
例えば失敗談であれば、
「事前の準備が不十分でお客様にご迷惑をおかけし、大きなクレームに発展したことがありました」
で終わりにするのではなく、
「必ず複数の職員で経過を情報共有するようにルール作りをして、それからはほとんどミスがなくなりました」
など、その後の対策を入れることも大事です。

 

また、自分の短所を聞かれたら、
「優柔不断なところがあるので、物事を判断する時に迷ってしまうことがあります」
で終わりにするのではなく、
「普段から優先順位をつけることを意識して、なるべく早く性格な判断ができるように心がけています」
とか、
「優柔不断なところはありますが、そのぶん物事を慎重に進めることができます」
など、克服するために気をつけていることや、短所を転じさせてさりげなく長所のように話すのもありです。

 

面接官の採点基準

 面接官の採点基準は、とどのつまり「この人と一緒に働きたいか?」です。

働きたくないなと思われたら終わりです。
それは、面接の回答内容に限ったことではありません。例えば入室時の挨拶が弱々しすぎるとか、会話が噛み合わないとか、内容ではなく態度によって低評価がつくこともあります。

 先ほど列挙した、回答する際に意識すべき4項目は、面接官に「この人となら一緒に働きたいな」と思ってもらうために有効なものです。テンポよく聞かれたことに答えることができて、一つ一つに具体的なエピソードがあって説得力があり、元気で爽やかな挨拶と程よい笑顔があれば、うちの部署にこういう人が配属されたらいいな、と思うものです。

 


 

 最後に、私が公務員試験について全くのど素人だった時に、大いに参考になった本を紹介しておきます。このブログよりもはるかに有益な情報がぎっしり詰め込まれており、エントリーシートの書き方も面接試験対策も、それぞれこの1冊ずつで十分上位合格を果たすことができました。