【横浜市役所】実際の面接試験の流れと質問内容

 公務員試験の面接試験対策と聞くと、

「志望動機とか自分の強みとか聞かれるしまず自己分析しろとか言うんでしょ」
「実際どんなこと聞かれるのか知りたいんだけど」
「当日どんな感じなのかイメージが湧かないんだけど」

と言う相談者の方がいます。

まるで数年前の自分を見ているようで、大変親近感を抱きます。そりゃそうですよね。実際にどんな雰囲気でどんなことを聞かれるのかを真っ先に知りたいですよね。

 

 というわけで、今回は私が実際に受けた横浜市役所の面接試験の様子をそのまま書いてみようと思います。数年前の出来事なので、今は異なるかもしれませんのでそのあたりは予めご了承ください。

 

 横浜市役所の大卒一般事務は、択一式と専門時事論文試験の後に、二次面談と三次面接があります。はい、お気付きの通り、二次は「」、三次は「」です。若干の違いはありますが、どちらも普通の面接対策をしていれば大丈夫です。

 

二次面談

集合から受験までの流れ

 会場は、人事委員会が入っている横浜市内の某ビル。横浜市役所は2020年に新庁舎に移転したので、現在は別の会場かもしれません。

 まずは受験者控え室に通されます。受験番号ごとに面談の開始時刻は違いますが、それに伴って集合時間も受験生ごとに別々に設定されているので、控え室での待ち時間は短かったです。

 同じ時刻に控え室に集合していたのは24名でした。面談は個人面談ですが、大部屋にA〜Hの8箇所のブースが用意してあり、受験生8人が同時に面談を受けます。それぞれの場所で1番目〜3番目までいて、合計24名。

 私はCの1番目だったので(これは控え室で発表されるので事前には分かりません)、待ち時間はほぼゼロでした。面談は1人20分程度なので、3番目の人たちでも待ち時間は1時間程度です。

 控え室でそれらの説明を受けて、ほどなくして控え室の内線が鳴り、1番目の8人が職員に連れられて控え室から面談会場へ移動します。シーーーーンとした状態で8人+職員がエレベーターに乗り、会場前へ。独特の雰囲気です。

 

 会場の中から合図があると、8人が順番に「失礼します」と挨拶して中へ入っていきます。

 「面談」というだけあって、それほど重苦しい雰囲気ではありません。面接官も三次面接に比べると若いです。それもそのはず、二次面談をやるのは「係長級または課長補佐級」「課長級」の2人。三次面接は「課長級」「部長級」で計3人いて、しかも個室ですから、やはり雰囲気は異なります。

 当然ですが、大部屋の中でブースで仕切ってあるだけなので、他の受験生の話し声も結構聞こえます。内容の詳細までは聞こえなくても、隣のブースに関しては、笑ってるなとかつまづいて無言になってるなとか、おおよその雰囲気は伝わってきます。個人差はあるでしょうが、会場の雑音があることで、かえって自分の緊張がほぐれるのではないかと思います。

 

面談で質問された内容

質問された内容は下記の通りです。

 

40代後半(と思われる)課長級女性職員から

  • 面接試験というのは久しぶりですか?あまり緊張なさらないでくださいね。(導入)

30代前半(と思われる)係長級男性職員から

  • 現在の職場はどういうところですか?仕事内容も含めて分かりやすく説明してください。
  • 今働いている部署は何人くらいの職員が働いているのですか?
  • なぜ事務区分で受験したのですか?
  • 今の仕事から公務員への転職はかなり勇気の要ることだと思いますが、なぜこのタイミングで受験しようと思ったのですか?
  • 横浜市の「100万人の健康づくり戦略」のどの部分に興味があるのですか?(←エントリーシートに興味あるって書いたので)
  • 仕事でミスをしたことはありますか?どう対処しましたか?
  • 一番苦労したクレーム対応やお客様対応はどんな感じでしたか?どう対処しましたか?
  • 現在は○○市や○◯も併願していると書いてありますが、合否や経過はどうですか?どのような意図で併願したのですか?

40代後半課長級女性職員から

  • なぜ横浜市を受験しようと思ったのですか?他の自治体ではダメなんですか?
  • あなたは現在横浜市外にお住まいですが、市外から見て横浜市はどのように見えますか?どのようなところが魅力的だと思いますか?
  • (↑この質問の回答を踏まえて)なぜ横浜市は時流に応じて機敏に政策を打ち出せるのだと思いますか?
  • 現在の職場で、チームの一員としてチームをまとめるのと、リーダーとしてチームをまとめるのとで、どのように違いますか?また、共通して気をつけていることはありますか?
  • 部下指導ではどのようなところが大変ですか?
  • もし横浜市に入庁したら◯◯局での仕事を希望しているようですが、入庁後ずっと希望の部署や仕事に就けないこともありますが大丈夫ですか?

 

三次(最終)面接

今更ですが、横浜市役所のだいたいの受験者と合格者の人数は、

【一次】受験者3,000名 → 合格者1,000名 →【二次】合格者500〜600名 →【三次】合格者200名

くらいです。三次面接までくればもうあと少し。でもここが最大の山場です。ここまで絞り込まれた受験生たちが最後の面接に挑むわけですから、念入りに準備が必要です。

 

 控え室から受験会場までの流れは二次面談の時と似たようなものですが、今回は個人面接なので、一人一部屋ずつに入っていきます。時間は25分程度です。
 面接官は先ほど書いた通り、「課長級」2人+「部長級」1人=合計3人です。雰囲気も雑談という感じではなく、二次面談よりは厳かな感じです。とはいえ、普通の面接試験の感じなので、緊張はしすぎずに平常心で臨めば大丈夫です。

 面接官は40代〜50代の男性職員3人だったので、誰がどの質問をしたかまでは記憶の区別はついておりませんが、圧迫面接っぽいことはありませんでした。ただ役割分担はされていて、真ん中の人(おそらく部長級)は突っ込んだ質問をする、両サイドの2人(おそらく課長級)はたまに雑談っぽい質問も交えて緊張感をほぐす、といった感じでした。

 

面談で質問された内容

  • 今の職場は何人くらいの職場ですか?あなたはそこでどのようなポジション?
  • 横浜市でどのような仕事をやりたいですか?
  • (↑この質問の回答を踏まえて)それに関して、現在横浜市で取り組んでいる政策で携わりたいものはありますか?
  • (↑この質問の回答を踏まえて)それ以外にあなたの興味のある仕事は何かありますか?
  • あなたが横浜市でやりたい仕事はどのような部署でやっているか知ってますか?
  • 希望の部署とは違うところに配属になっても大丈夫ですか?
  • もし入庁したら、高卒もいるし、年下の人たちと同じ新卒扱いになるけど大丈夫ですか?
  • 今までの仕事で培った知識やキャリアが全く不要な仕事に就いても大丈夫ですか?
  • なぜ公務員になろうと思ったのですか?
  • 休日は何をしていますか?ストレス解消法は何かありますか?
  • 子育てや家事の分担は奥さんとどのようにしていますか?何かルールは決めていますか?
  • (当時は土曜も仕事だったので)土曜日も出勤だと子供と過ごす時間が短くて寂しくないですか?
  • 今までに仕事で大変だったことは何ですか?どう乗り切りましたか?
  • 今も立派な仕事をしているのに行政職員になっていいの?キャリアリセットになりますよ?
  • 教育や子育て関連で、今後横浜市ではどのような政策ができると思いますか?
  • (↑この質問の回答を踏まえて)子供にはやはり家でゲームより外で遊ばせた方が良いと思いますか?
  • 家でゲーム三昧の他に、子供にとって悪影響を及ぼしそうなことって何が考えられますか?
  • 保護者のモラルやマナーについて、行政側からできることは何かありますか?
  • 今までの転職歴について、その経緯を教えてください。また、今振り返ってみてどう思いますか?
  • 今までの仕事とは全然違う、行政の仕事に挑戦するのは不安ではないですか?
  • 職場の人はあなたが公務員試験を受験していることを知っていますか?
  • 合格したら今の会社を辞めることになりますが、引き止められませんか?
  • 現在の仕事の業界では、転職はよくある話ですか?
  • 横浜市に入庁したら一生横浜市で働きますか?嫌になることはないですか?

 

回答時に意識すべきこと4つ

横浜市役所に限らず、公務員試験の面接に臨む時に、常に意識しておくべきことがあります。

 

1.各質問に対する回答時間は30秒程度にする

 質問項目数を数えてみると、二次面談は20分で15問、三次面接は25分で24問(うち4問は2回質問されているので延べ28問)でした。一問一答の試験とはいえ、面接も人と人との会話やコミュニケーションの一環です。前の質問や回答とリンクしている項目も多いので、テンポよくラリーのように続けていく方が、自分も面接官もお互いが気持ちよく進んでいきます。噛み合った会話がテンポ良く続けば、「できる人だな。こういう人と一緒に仕事したいな」と思ってもらいやすくなります。

 およその目安ですが、面接時間=質問項目数がちょうど良いテンポです。
質問時間10秒→回答を考える時間5秒→回答時間30秒→面接官が回答をメモする時間10秒
で約1分です。
 私は二次面談終了後、面接時間>質問項目数だったため、やや回答が間延びしたなと反省し、三次面接ではより簡潔な回答ができるように心がけました。

 

2.結論を先に言う

 全ての質問に対して、簡潔に30秒以内に回答しようと思ったら、これがテクニックとしては手っ取り早いです。閉じた質問なら「はい」か「いいえ」、開いた質問なら「〜だと思います。理由は〜だからです」「〜に関心があります。なぜなら〜だからです」というように、まず最初に核心となる回答を表明しておくと、聞き手にも分かりやすく伝わります。

 

3.偏った考えではなくバランス重視の回答をする

 先ほどの三次面接の質問項目で、「子供には家でゲームより外で遊ばせた方が良いか?」というものがありました。これはいわゆるコンピテンシー型の質問の一部で、

(Q)教育や子育てでどのような政策ができると思うか?
【A】子供達がゲームばかりするのではなく、外で遊ぶためのきっかけ作りを、行政が学校や地域と連携してできたら面白いと思います。
(Q)やはり子供にはゲームより外で遊ばせた方が良いか?

という流れでした。

ここで避けた方が無難なのが、「はい。外で遊ぶ方が健康な子供になると思うので、ゲームはしない方がいいです」というような、偏った意見を言うことです。

 

 公務員というのは、常に公平公正中立の立場が求められ、一部ではなく「全体の奉仕者」でなければなりません。どちらかに偏る考え方より、バランスのとれた考え方や柔軟な発想を持っている職員が望まれます。全ての質問に対してそうであれというわけではありませんが、常に「バランス感覚は大切だ」という意識を頭の隅に置いておくのはとても重要なことです。

 私は先ほどの質問を聞いた時に、「あーこれは考え方のバランス感覚を試されているな」と感じたので、

 【A】どちらも適度に楽しむのが良いと思います。今の子供達は生まれた時からインターネットやデジタル機器が当たり前のように身の回りにあるので、それらに馴染むという意味では有益なことですし、その一方で外で走り回ることも健康な発育には大切なことだと思います。

と回答しました。回答後、真ん中の部長級職員の面接官が「うんうん」と静かに頷いていたので、無難な回答ができたのかなと思いました。

 

4.「今の仕事辞めちゃっていいの?全然違う部署に配属でもいいの?」は繰返し聞かれる

 民間企業から公務員に転職しようとすると、必ず聞かれる質問です。が、二次でも三次でもここまで繰返し聞かれるとは正直思っていませんでした。また、これは横浜市役所に限らず、他の自治体の面接でもたびたび質問されました。これは、その人が現在どのような仕事をしているかや、過去の転職歴の内容にもよると思うので、一概には言えないでしょうけど、ある程度心づもりはしておいた方が良いと思います。

 つまり、それだけ「入庁後に『こんなはずじゃなかったのに』と思ってほしくない」「もし受かっても数年後にはまた転職してしまうのではないだろうか」と思っているということです。裏を返せば、この人は合格させたい、こういう人と長く一緒に働きたい、私たちの不安を払拭してほしい、という気持ちの表れでもあるかもしれません。それさっきも聞いたじゃん?と不審がらずに、何度聞かれても「大丈夫です!」と根気よく説得するように回答しましょう。

 

最後に

いかがでしたでしょうか。

面接慣れしてくると、徐々に面接中の雰囲気で「この質問はこんな回答を求めているんだろうな」「そろそろ合格させてもいいかなぁくらいに思っているな」「合格に近づいてはいるけど決め手に欠くなぁって思っているな」「あ、もう合格したな」というのが分かるようになってきます。

 また、質問項目を一通り見ると、意外と「志望動機」や「過去に力を入れて取り組んだこと」に関する質問が少ないと感じると思います。先ほども言った通り、面接試験とはいえ、本質は人と人との会話です。面接官は受験生が用意周到に準備してきた回答を聞きたいのではなく、様々な質問を通じてその人の本来の人間性や考え方を見たいのです。ですが、私たち受験生は、そのさらに上をいく回答を準備し、その場で考えた風に、あるいは人間性がにじみ出ているように、面接官に披露して納得してもらう必要があります。

 そのためにも、想定問答をたくさん用意し、突飛な質問が来ても準備した回答をいくつか組み合わせれば答えられるように対策しておきましょう。私の場合、想定問答は約100問、A4用紙20ページ分を準備しておきました。これは最終合格後、実務教育出版の合格体験の取材時に見せてほしいと言われ、インタビュー後に全てのデータを提供しました。後進の一助となっていることを願うばかりです。

 あわせて、この記事が、民間企業から地方公務員に転職しようとしている方々のお役に立てることを願っております。

 

具体的な面接対策についてはこちらをどうぞ↓

hanatojuku.hatenablog.com

 

 私が愛読していた本も紹介しておきます。これ読むだけでかなり試験対策の時短になりました。

志望動機の書き方

 エントリーシートや面接カードで最初に「はぁ・・・何書こう・・・」ってなるのが【志望動機】の欄だという方も多いのではないでしょうか?

 

 私も最初はそうでした。どう書けばいいのかが分からない。合格する人たちはどんな風に書いているのかが知りたい。

 今回は、そんな方々に少しでも参考になればと思い、私なりの志望動機の書き方を紹介します。

 

本音はとっくにバレてる

 志望動機の書き方の前に、まずはなぜ自分がその自治体の地方公務員になりたいと思ったのか、ホンネの部分を洗い出してみましょう。

 

私の場合は、

  • シフト制より土日休みがいいなぁ
  • 休みが取りやすいのがいいなぁ
  • 立ち仕事より座ってデスクワークがやりたいなぁ
  • 飽きっぽいから3年ごとに全然違う部署に異動するくらいがちょうどいいなぁ
  • 17時過ぎに仕事が終わるのいいなぁ
  • どんどん昇給するし平均年収が一流企業並みでいいなぁ
  • 地方公務員だと転勤がないからいいなぁ

挙げればきりがありませんが、要するにクズですね。こんな志望動機のままに役人になられたら、そこの住民の方が不憫でなりません。しかし、私がまだ公務員のことをよく知らなかった時、一番最初に「公務員試験ってのを受けてみようかな」と思った頃は、せいぜいこんなもんでした。

 そして、今挙げた私の志望動機、「実は私も・・・」と、共感してしまっている方も多いのではないでしょうか?

 

 公務員試験の採点に携わる人たちは、すべてお見通しです。

「どうせ受験生の大半が本音とは全然違うもっともらしい志望動機を書いてるだけでしょ」

「公務員ならどこでもいいって思っていて、一次試験で通ったのがうちだったから面接に来ただけでしょ」

くらいのことは考えています。これまでに何百人ものエントリーシートや面接カードを見て、面接をして、中には自分が面接した人がその後入庁して自分の部署に配属になって一緒に仕事をして、お互いの当時の印象まで語り合ってきているような、「人を見るプロ」たちが公務員試験の採点をしているのです。

 

 エントリーシートや面接カードには、そんな百戦錬磨の人たちが見ても納得するような、あるいは「面接でもっと話を聞いてみたいな」と思えるような、そういう志望動機を書き上げる必要があります。本音はバレている前提。そこからいかに「そうじゃないんだ!本当にここの自治体で公務員になりたいんだ!」ということを納得してもらうか。単なる熱意ではなく、理由づけをして説得力をもたせましょう。

 

「志望動機」が持つ2つの側面

 そもそも、なぜどこの公務員試験でも毎年毎年志望動機を聞いてくるのか?
それはやはり、その自治体の公務員として働こうとする本気度を知りたいからです。

 ただし公務員試験の志望動機は、エントリーシートや面接カードのような「書面」で書かせる場合と、面接試験で直接問うような「口頭」で答えさせる場合とで、少し意味合いが違います。

 

1.書面で書かせる場合

 「本当にうちに入庁したいの?本当は滑り止めなんじゃないの?公務員ならどこでもいいと思ってるんじゃないの?」と思っている相手に、文章だけで思いの丈を綴り納得してもらう、いわばラブレターのようなものです。相手が求めているのは「地域に貢献したい」だの「市民生活を支えたい」だのありきたりな文章ではなく、なぜあなたが全国1,700以上もある自治体の中からわざわざうちを選んだのか?を納得させてくれるような、あなたならではの独自性と説得力のある文章です。

 

2.面接で答えさせる場合

 「必ず聞かれる質問だからどうせ予め準備してきた回答があるんでしょ?面接で聞きたいのはもっと本音の部分や意外な質問に対する回答だから、その用意してきたやつは今のうちにさっさと吐き出しちゃってよ」という感じで、最初に質問して次の質問に移るための導入です。志望動機は?と聞いて返ってくる回答そのものよりも、それを元に「なぜあなたはそう思ったの?」「それなら他の自治体でもできるとは思わなかったの?」と、二の矢三の矢を飛ばして返ってくる回答こそが、面接官が本当に聞きたい部分です。

 

 このように、書面で書く場合は「その回答こそが超大事。一撃で納得してもらいたい。目をひかせてじっくり読んでもらおう」、面接で答える場合は「単なる導入。大事なのはその後。なんなら多少言葉足らずでも追加で質問できるから大丈夫、サラッといこう」という感じで、若干意味合いが異なります。

 いずれにせよ、当然ながらエントリーシートや面接カードに書く志望動機欄はとても重要です。最終面接まで影響する書類なので、しっかりと練り上げて書きましょう。

 

志望動機の構成に必要な5項目

 志望動機の書き方は様々あると思いますが、下記の項目を入れて構成すれば、だいぶ説得力のあるものに仕上がります。

 

  1. なぜ民間企業ではなく公務員でなければいけないのか?
  2. なぜ国家公務員ではなく地方公務員なのか?
  3. なぜ他の都道府県や市区町村ではなくその自治体なのか?
  4. 自分のどのようなところが公務員に向いていると思うか?
  5. 採用されたらどのような仕事に貢献できる(取り組みたい)か?

 

 記入欄の都合などで、もしこれらの中で書かなかった項目があったとしても、面接では必ず聞かれますので回答は用意しておく必要があります。1〜3は必須項目です。書いておかないと、「別にうちじゃなくてもよくない?」と思われてしまいます。

 

 4と5を見て、「それ、志望動機というか自己PRじゃない?」と思った方もいるかもしれません。
 そのとおりです。志望動機と自己PRはリンクしています。自己PRは、自分の「過去と現在」を元に適性をアピールしていきます。志望動機は、自分の「現在と将来」についてアピールすることになります。一貫して、自分とはこういう人間だ、という自己分析が必要になります。

 

 また、志望動機を文章に仕上げていく際のテクニックを2つご紹介します。

 

1.箇条書き形式にする

必ずしも「箇条書き」である必要はありません。箇条書き「形式」にすると読みやすくて良いということです。例えばこんな感じです。

 

私が○○市を志望する理由は、大きく二つあります。第一に、・・・からです。第二に、・・・と考えたからです。
私が○○市を志望した理由は、下記の2つです。
①・・・や・・・などの取組みに共感したため。
②過去に・・・という経験をし、○○市の・・・の施策に貢献したいと考えたため。

 ただし、志望動機の記入欄が5行程度しかなければ、わざわざ箇条書きにするのではなく、簡潔な文章で普通に書いた方が良いです。大まかな目安ですが、10行以上あったら箇条書きを検討した方が良いかなと思います。私はそのようにして両方を使い分けていました。

 

2.体験談やエピソードを交える

 どの項目も、理由づけとして自分のエピソードを交えることが説得力につながります。例えば、ただ「○○市の・・・という仕事に携わりたいです」と書くのではなく、「私は・・・という経験をして、・・・ということを学びました。その時・・・と考え、この経験は○○市の・・・という施策にも貢献できると考え、私も携わりたいと思いました」のように書くと、あなたならではの独自性のある内容になり、説得力が格段に増します。

 以上を踏まえて志望動機の一例を示すと、こんな感じになります。

 

私は・・・での仕事を通じて、・・・ということを経験してきました。その中で・・・ということを感じ、・・・のような仕事をしたいと考え、公務員を目指しました。特に○○市では・・・の施策に力を入れており、・・・という面で自分の経験が活かしたい思い、志望いたしました。

 これを基本骨格として、あとは記入欄の大きさに応じて経験談と取り組みたい仕事を増やしたり、それに応じて箇条書き形式にしたり、自分の公務員への適性をエピソードを交えて書いたり、いろいろアレンジしていけば、独自性と説得力があり面接に繋がりやすい志望動機を仕上げることができます。

 

志望動機が完成した後にやること

 さて、志望動機がバッチリできあがったら、そこでおしまいにしたらもったいない!!!
 先ほどもお伝えしましたが、志望動機と自己PRはリンクしています。どうせ自己PRも考えないといけないなら、志望動機と一緒に考えておくのが効率的です。自分にはこんな経験がある、こんな仕事をしてきた→だから公務員になったらこんな仕事に役立つことができる、というのは、志望動機であると同時に、まぎれもなく自身の強みであり、立派な自己PRになります。

 特に民間企業から公務員に転職しようとする場合は、面接で必ずと言っていいほど「採用されたらどんな仕事に携わりたいですか?」「うちにとってあなたを採用するメリットは何ですか?」などと聞かれます。いずれも「自身の経験→強み→自己PR」の流れで回答できます。

 

 せっかく志望動機を練り上げたのなら、同時に「やりたい仕事」「自己PR」「その自治体で自分が貢献できること」くらいはまとめておくと、面接対策にもなります。面接対策は一次試験が合格してから取り掛かる人も多いですが、圧倒的に遅いです。その人たちに勝つためにも、ぜひ早めに考えておきましょう。早めに考えてWordにまとめておくと良いです。本格的に面接対策をするようになったら、そのWordの続きから想定問答集を作っていけばいいのです。

 私が実際にやって上位合格を果たした面接対策は、こちらに書いておきましたので合わせてどうぞ。

hanatojuku.hatenablog.com

 

私が受験前に度々開いて参考にしていた書籍はこちらです。2022年版も出ているようです↓

地方公務員試験の面接対策

 公務員試験対策の中でも特に重要なのが、面接試験対策です。ほとんどの自治体で筆記試験より面接試験の方が配点が高く、採用基準がより人物重視になっていることが見て取れます。
 とはいえ、公務員試験を初めて受ける方からしたら、一体どんなこと聞かれるの?どんな準備をしていけばいいの?と思うでしょう。また、過去に受けたけど筆記試験は大丈夫なのに面接試験で落ちてしまった、という方もいるかもしれません。

 

 公務員試験の面接は、いたってオーソドックスで、しっかり準備すればなんら恐れることはありません。また、志望動機やその自治体でやりたい仕事を変えれば、併願先の面接でもそのまま使えます。つまり、公務員試験の面接は再現性が非常に高く、一つ合格できる面接対策をしておけばいくつもの最終合格を勝ち取ることができます。逆に、その準備が不十分だと、いくつ併願しても一つも合格することはできません。合格するには、”コツ”があります。

 

面接対策はいつからすれば良いか

 具体的な面接対策の話に入る前に、そもそも面接対策はいつから始めれば良いと思いますか?ほとんどの受験生が、択一試験が終了した後とか、もっと遅い人は一次試験の合格が出てから始める人もいます。
 もちろん、それでも最終合格できる人はいます。面接試験に慣れている人や、よほど人間的に公務員に適した人であれば、それも十分可能でしょう。しかし、より確実に最終合格を掴み取りたければ、もっと前から始めておくべきです。

 

 私が最初に面接対策に着手したのは、エントリーシート作成時です。

 私は公務員試験を30歳の時と35歳の時の2回受けて2回通っていますが、初心者だった1回目の時でいうと、

 

10月 択一試験勉強開始
2月 模試受験
4月 エントリーシート提出 ←ココ
5月 小論文対策開始
6月 択一試験
7月 小論文試験、面接1回目
8月 面接2回目
9月 最終合格発表

 

 4月のエントリーシート提出時に、最初の面接対策を始めました。もちろん、始めたのがその時期なだけで、その後ずっとやっていたわけではありません。この頃はまだ、

 

・志望動機
・それまでの経験(学生、社会人含め)
・その自治体で取り組みたい仕事
・その他の想定質問を少々

 

を考えていた程度です。しかし、この作業をやっているかいないかの差は大きいです。

 

 なぜエントリーシート作成の段階で面接対策を始めるかというと、理由は次の2つです。

 

  1. エントリーシートに「志望動機」や「採用されたら取り組みたい仕事」などの項目があるから
  2. 面接試験で聞かれる質問内容をこちらから誘導するため

 

 1つ目の理由は想像しやすいと思います。
 エントリーシートの中身は自治体によって違いますが、多くの自治体で「志望動機」「これまでの社会人経験での実績」「過去に力を入れて取り組んだこと」「もし採用されたら取り組みたい仕事」などが、記入項目として入っています。そのどれもが面接試験でも聞かれそうな定番中の定番の質問なので、この時期から回答を用意しておいて、それを文章にすればエントリーシートも作成できるということです。また、エントリーシート提出から最終面接までは3〜4ヶ月ほど開くこともありますが、答える内容を一致させるためにも、この時期に面接とエントリーシートの両方を見据えて回答を用意しておくとスムーズに対策できます。

 

 2つ目の理由は、なかなかやっていない受験生も多いと思います。
 エントリーシートの具体的な作成方法についてはまた別の記事で紹介しようと思いますが、エントリーシートは「単なる申込書」ではありません。面接官はエントリーシートを見ながら「へぇ〜、この人はこういう人なのかな。じゃあこれ突っ込んで聞いてみよう」と思うわけですから、エントリーシートは面接試験内容に直結する大切なツールになります。これを利用して、面接の質問をこちらから誘導することができます。

 

 例えば、ある受験生が、職場ではリーダーと新人の中間くらいのポジションで、新人教育しながらリーダーのサポートもする立場の人だったとします。リーダーからも頼られ、新人からも慕われ、時には落ち込む若手職員を励ますこともできる、職場には欠かせない戦力だったとしましょう。
 当然、面接試験ではそのあたりをアピールしたいところです。

 

 エントリーシートでは、全てを書く必要はありません。面接試験の布石となるような一手を簡潔に記しておくことが大切です。

 「私は職場の目標を理解し、チームみんなで協力して仕事に取り組むことができます。リーダーのサポートをしつつ、若手職員の教育も任せられることが多く、そうして目標が達成できた時はやりがいと達成感を感じることができました。」

 記入欄の大小にもよりますが、内容的にはこれくらいでも良いと思います。そしてこの時、同時に面接対策もするのです。

 

これを元に聞かれそうな質問を挙げると、

 

  • リーダーをサポートする上で、意見が合わないことはありませんでしたか?
  • 若手職員の教育をする時は、どのようなことを心がけていましたか?
  • 丁寧に教えてもなかなか仕事がうまくできない若手職員がいたらどうしますか?
  • 若手職員がリーダーの言うことをなかなか聞かない時はどうしますか?
  • 今まで達成した目標の中で、一番嬉しかったのはどのような目標ですか?
  • 懸命に取り組んだのに達成できなかった目標はありましたか?その時どう思いましたか?
  • もしあなたがリーダーになるとしたら、どのようなチームにしようと思いますか?
  •  

・・・などなど。挙げればキリがないくらいです。
 たった数行のエントリーシートの内容から、これだけの質問が想定されるわけです。そのきっかけとなる資料が、エントリーシートなのです。最初の面接対策は、ぜひエントリーシートを作成する時に、自分が書いた内容から派生させて想定質問を考えてみてください。
 そして、先ほども書きましたが、これは一度作っておけば、どの自治体を受ける時にもそのまま流用できます。限られた時間の中で最終合格までを見据えた対策をするためにも、ぜひエントリーシート作成時から面接試験のことを想定しておいてください。

 

「自然体で臨む」と「準備をしない」の違い

 面接試験は、確かに「自然体で臨んで素の自分をさらけ出す」と言う側面もあります。緊張しすぎて何も話せなくなっちゃうより、ある程度リラックスして臨んだ方が良いです。・・・が、それは面接官がちゃんとそういう空気を作ってくれるし、緊張している受験生も実力を発揮できるように、ある程度和やかに進めてくれます。

 面接試験では、自分の話した内容を面接官に「納得」してもらう必要があります。うわべだけの回答を並べても必ず見抜かれます。「リーダーシップがあります」とか「協調性があります」とか言っても全く納得してくれません。そう思わせるだけの具体的なエピソードが必要です。そして、そう言うエピソードというのは、面接中に聞かれてとっさに出てくるものではありません。あらかじめ、「これをアピールしたい時にはこのエピソード」というふうに、準備をしておく必要があります。

 

 また、志望動機ですが、これについてはまた考え方が分かれます。

「どんな理由でうちの自治体を受けようと思ったのか、本当にうちを心から志望しているのか、しっかり見極めたい」

と思って聞く面接官もいれば、

「志望動機なんてみんな似たり寄ったりなことを言うだけだし、さすがにみんな準備してきてるから、そういう準備万端な回答はさっさと吐き出させて、その後の準備してなさそうな質問をぶつけてどう回答するかが聞きたいんだよね」

と言う位置付けで聞いている面接官もいます。
居住地から遠い自治体や、自分と縁もゆかりもなさそうな自治体を受けた場合は前者が多く、自分が住んでいる自治体を受ける時などは後者が多いように思います。

 

 面接試験は、その人の素の人間性を見たいという側面もありますが、あまりに準備不足で言葉に詰まってばかりいると、「事前にしっかり予測したり準備したりすることができない人なのかな?」という印象を持たれかねません。

 

合格する想定問答集の作り方

 面接試験対策に欠かせないのが、「自己分析」と「想定問答集作り」です。
自己分析については、各面接対策本にも書かれていますし、想定問答集をいっかり作ろうとすると結局知らないうちに自己分析がバッチリできているケースも多いので、ここでは想定問答集の作り方に重きを置いて書こうと思います。

 

面接試験で聞かれる質問を大きく分けると、以下の3通りあります。

 

  1. エントリーシートの内容からの質問
  2. エントリーシートとは関係のない質問
  3. それぞれの回答からさらに突っ込んで聞いてくる質問

 

1.エントリーシートの内容からの質問

 先ほど「面接対策はいつからすれば良いか」の項でも書きましたが、数行のエントリーシートの内容から、いくつもの想定質問が考えられます。まずはそれを全部書き出します。全く見当がつかないという方のために、いくつか例を挙げておきます。

 

志望動機

  • なぜ民間企業ではなく公務員でないといけないのか?
  • なぜ国家公務員ではなく都道府県(あるいは市町村)でないといけないのか?
  • なぜ他の都道府県(市町村)ではなくその自治体でないといけないのか?
  • 採用されたらどのような仕事に従事したいのか?

これまでの経験

  • どのような仕事をしてどのような実績があるか?
  • 仕事を通じて何を身につけてきたか?
  • (過去に転職歴があれば)なぜ前の会社を辞めたのか?
  • 民間企業での経験を公務員としてどう生かせると思うか?
  • うちの自治体があなたを採用した時のメリットは?

人間性、人物像

  • 自分の性格の長所は?短所は?セールスポイントは?
  • 短所の改善のために心がけていることはあるか?
  • その短所が災いして何か失敗したことはあるか?それはどう乗り越えたか?
  • 長所が生きたエピソードは?
  • あなたは周りからどのような人物と言われることが多いか?

 

2.エントリーシートとは関係のない質問

  • 休日はどのようにして過ごしているか?
  • ストレス発散の方法はあるか?
  • 趣味や特技はあるか?
  • 最近気になっているニュースはあるか?それに対するあなたの意見は?
  • うちの自治体に対してどのようなイメージを持っているか?
  • 理想の上司像は?
  • 希望以外の部署に配属になったらどのようにモチベーションを保つか?
  • うちの自治体が抱えている課題とその改善案を一つ挙げてみて?
  • 働きやすい職場とはどのような職場だと思う?

 

3.それぞれの回答からさらに突っ込んで聞いてくる質問

これは、1.2.で作成した自分の回答から、自分が面接官ならそこからさらにどんな質問をしたいか?を考えて書き出していきます。

 


 

 想定質問をひたすら列挙したら、あとは回答を作成していきます。その際、常に意識しておくべきことがあります。

 

  1. 一つの回答は30秒以内で話せる程度の量にすること
  2. 質問の答えになっていること 
  3. 具体的なエピソードを交えること
  4. 失敗談や苦労話はそれだけに終わらず、必ず「それをどう乗り越えたか」「そこから学んだこと」も一緒に話すこと

 

 以上4点を意識するだけでも、だいぶ合格に近い回答を作ることができます。
2番目は「え?当たり前でしょ?」と思うかもしれませんが、私が入庁後に面接官経験のある上司に聞いたところ、しゃべっているうちに話が逸れてしまい、結局質問の答えになっていない回答をする受験生が意外と多いそうです。たまにスポーツの試合後のヒーローインタビューで、「今日の勝因はどんなところだったと思いますか?」と聞かれているのに「今日は何としても勝ちたかったので勝ててよかったです」って答えている選手がいるみたいな、そういうやつです。

 

4番目は最も重要です。
例えば失敗談であれば、
「事前の準備が不十分でお客様にご迷惑をおかけし、大きなクレームに発展したことがありました」
で終わりにするのではなく、
「必ず複数の職員で経過を情報共有するようにルール作りをして、それからはほとんどミスがなくなりました」
など、その後の対策を入れることも大事です。

 

また、自分の短所を聞かれたら、
「優柔不断なところがあるので、物事を判断する時に迷ってしまうことがあります」
で終わりにするのではなく、
「普段から優先順位をつけることを意識して、なるべく早く性格な判断ができるように心がけています」
とか、
「優柔不断なところはありますが、そのぶん物事を慎重に進めることができます」
など、克服するために気をつけていることや、短所を転じさせてさりげなく長所のように話すのもありです。

 

面接官の採点基準

 面接官の採点基準は、とどのつまり「この人と一緒に働きたいか?」です。

働きたくないなと思われたら終わりです。
それは、面接の回答内容に限ったことではありません。例えば入室時の挨拶が弱々しすぎるとか、会話が噛み合わないとか、内容ではなく態度によって低評価がつくこともあります。

 先ほど列挙した、回答する際に意識すべき4項目は、面接官に「この人となら一緒に働きたいな」と思ってもらうために有効なものです。テンポよく聞かれたことに答えることができて、一つ一つに具体的なエピソードがあって説得力があり、元気で爽やかな挨拶と程よい笑顔があれば、うちの部署にこういう人が配属されたらいいな、と思うものです。

 


 

 最後に、私が公務員試験について全くのど素人だった時に、大いに参考になった本を紹介しておきます。このブログよりもはるかに有益な情報がぎっしり詰め込まれており、エントリーシートの書き方も面接試験対策も、それぞれこの1冊ずつで十分上位合格を果たすことができました。

 

教養択一試験で得点率を上げる方法

 公務員試験に挑戦するにあたり、まず最初に気になるのが択一試験についてでしょう。

 

・勉強方法は?
・難易度はどれくらい?
・どんな内容なの?
・勉強時間はどれくらい必要なの? ・・・などなど。

 

 数ヶ月間にも及ぶ公務員試験の中で、教養択一試験は最初の壁でもあり、そのくせ最終的には面接試験と比べてさほど重要視される訳でもない(例えば得点換算比率が、択一試験:小論文:面接=3:1:6となるように)、言ってみれば「最低限越えてほしいハードル」という位置付けです。しかしその範囲は膨大で科目も多岐にわたるため、一体どこから手をつければ良いのか分からないという方、あるいはどれくらい勉強すれば合格ラインに届くのか全く見当がつかないという方も多いと思います。

 また、公務員は仕事上、根拠法令や大量の行政文書を取扱うことが多いため、試験もやや文系寄りな出題傾向にあり、法学部出身者の方が有利だとか、理系学部出身者には取っ掛かりにくいとかとも言われています。

 

 しかし前述のとおり、択一試験は「最低限超えてほしいハードル」。出題者側も、文系理系問わず中学高校レベルの知識で合格できるように問題設計しています。ただし、その出題傾向や出題形式には特徴があるため、コツを掴んでいるかどうかで合否を大きく左右します。そのため、何年も一次試験でつまずく受験生がいる一方で、必要最小限の時間でいくつもの合格を勝ち取ってくる人もいます。

 

 今回は、私が「生粋の理系人間でありながら」「仕事と育児をしながら」「1日2時間程度の勉強で」「30歳の時も35歳の時も」受験した全ての自治体で択一試験を合格できた秘訣をお話しします。

 

捨てても良い科目・捨ててはいけない科目

 公務員試験の教養試験(択一式)の合格ボーダーラインは、6割〜7割程度だと言われています。出題数は40問程度の自治体が多いですが、その内少なくとも12問は落としても大丈夫ということです。民間企業から公務員への転職を考えている方で、特に働きながら受験勉強を進める場合は、まずこのことを考慮して要領よく勉強を進める必要があります。

 

 一般的な択一式試験の科目と出題数を例示してみます。

 

(全40問の場合の一例)
◆一般知識(20問)
【人文科学】14問
・政治  1問
・法律  2問
・経済  2問
・社会  2問
・地理  2問
・日本史 2問
・世界史 2問
・思想  1問
【自然科学】6問
・数学  1問
・物理  1問
・化学  1問
・生物  2問
・地学  1問
◆一般知能(20問)
【文章理解】7問
・英文  3問
・現代文 3問
・古文  1問
【判断推理】7問
数的推理】5問
【資料解釈】1問

 

 この中で12問落としても良いとしたら、あなたならどの科目を捨てますか?

 

 私は生粋の理系人間でしたので、法律、経済、日本史、世界史、古文を捨てました。それだけでもだいぶ勉強量を減らすことができます。文系出身の方は、真っ先に数学や物理を捨てるかもしれません。もちろんそれでもOKです。
 高校の教科書を思い出してみて、あの膨大な範囲からたったの1〜2問しか出題されないことを考えれば、その科目に充てる時間を全て判断推理や数的推理の問題演習につぎ込んだ方がはるかに効率的です。ちなみに私の場合、勉強時間のみならず本番の試験時間もそこに充てることはせず、短縮のために前述の捨てる科目については「全て4」をマークして、問題文も選択肢も読まずにすっ飛ばしました。

 

 逆に、苦手であったとしても捨てるべきではない科目もあります。それは、一般知能問題(文章理解、判断推理、数的推理、資料解釈)です。理由は、知能問題は知識問題と比較して、問題演習を繰り返すことで格段に得点しやすくなるからです。一般知識問題(人文科学、自然科学)については知らなければ解けない問題が多いため、「参考書などで知識を習得する時間」と「問題演習をこなす時間」の両方が必要です。しかし、一般知能問題はひたすら問題演習を繰り返すのみで得点率が上がります。
 一方で、判断推理や数的推理を苦手とする受験生は多いです。従って、問題演習を繰り返してここを得点源とすることで、周囲との差をつける大きな武器になります。

 

問題集の選び方・使い方

 教養択一試験は、多くの自治体で約40問を90分程度で解きます。分からない問題に何分も費やす暇はなく、圧倒的に時間が足りない受験生が多いです。私が試験本番で「苦手な日本史や世界史などは捨てて、問題すら読まずに『全て4』をマークしてすっ飛ばした」という理由はこれです。じっくり読んでも正解できるか分からない苦手科目に何分も使うより、その時間を、計算すれば正解が出せる判断推理や数的推理に使う方がよっぽど効果的だと判断したためです。

 

 よく言われることですが、問題集は何冊も手をつけるのではなく、1冊を何度も繰り返し解いた方が効果的です。例えば教養試験なら、実務教育出版の『地方上級・教養試験 過去問500』を私は愛用しました。


 時間が十分にあるなら、判断推理で1冊、憲法で1冊、・・・というように科目ごとに1冊ずつ用意して全てを解くのも良いですが、間違っても「苦手だから判断推理の問題集を違う出版社で2冊買っておこう」などということはしないようにしてください。それならどちらか1冊を2回解いた方がはるかに良いです。どの出版社も、この1冊で十分まかなえる!という珠玉の1冊を販売しています。あれこれ手をつけるよりもその1冊をマスターすることの方が、短時間で合格点に近づきます。

 

 問題集の使い方はシンプルです。
 まず捨てる科目は無視して、それ以外の分野の問題を全て1周解きます。これが一番時間がかかりますが、飛ばさずに全問解きます。5分考えてもやり方が分からなければ、さっさと解答を確認して次の問題に進みます。数をこなすことが大切だからです。間違えた問題や分からなかった問題には✖️印をつけておきます。2周目は、この✖️印をつけた問題だけ解きます。また正解できなかったら、2個目の✖️をつけておきます。3周目は、2個の✖️が付いている問題だけを解きます。3周目は問題数も少なくなっているので、終わるのもだいぶ早くなっています。こうすることで、知識や学力の穴を埋め、ムラをなくしていきます。3周目が終わる頃には、1周目の時と比べてかなり力がついてきています。

 

 いきなり問題集をやるよりも、まずは参考書を読んで知識を蓄えてからの方が良いのでは?というご質問をよくいただきます。これに対する私の答えは「NO」です。前述のとおり、公務員試験の択一試験には、独特の出題傾向があります。知識を蓄えることよりも、問題形式や傾向に慣れることの方が、早く合格点に近づけます。


 私の経験では、試しに初学の地方行政法憲法の分野で、参考書を全部読みきってから問題集を解いてみたこともありましたが、それでも結局ほとんどの問題が✖️でした。どうせほとんど間違えるのなら、いきなり問題を解いて全部間違えたって似たようなものです。むしろ、特に初学の分野でいきなり参考書をやみくもに読み始めるより、一度生の問題に触れてから参考書を読んだ方が、どこが重要かが見えやすくて効率的に参考書から知識を吸収することができます。

 

 また、参考書と問題集は別々に買った方が良いのか、1冊で問題集と参考書を兼ねているものの方が良いのか、というご質問もいただきます。個人的には、問題集は問題集のみのものを使う方が良いと思っています。参考書との一体型では、どうしても掲載できる問題数に限りがあります。一体型の前提は、「知識を蓄えてから確認の意味で問題を解く」という方針です。より効率的に合格点に達するには、「問題を解きまくって形式と傾向に慣れ、よく出るところの知識を補充する」という方法の方が時間短縮になります。


 ただし、これは好みや基礎学力の個人差などもあるので、自分が使いやすく最後までやり抜きやすいものを選択するのが良いと思います。

 

 問題集を解くにあたって、知識問題と知能問題では取り組む時の心構えが違います。

 

知識問題:よく出題される分野や言葉の確認
 問題演習を繰り返すことで、膨大な範囲の中から、よく出てくる分野やキーワードを探ります。たくさん解いていくうちに、公務員試験が好きそうなジャンルや言葉が分かってくるようになります。最初は全問間違えたっていいし、言葉の意味すら分からない状態で構いません。理系人間の私は、法律や政治に関する問題は最初は全然分からなかったし、全ての選択肢が正解っぽく見えていました。
 そんなド素人の状態でも、先に問題集を解き、その内容を参考書で確認する「逆引き」のやり方は有効だし効率的です。問題を間違えるたびにこれを繰り返していくと、1周解ききる頃には、「参考書のこのページは何回も開いたな。よく狙われる場所なんだな」というのがある程度掴めるようになります。

 

知能問題:とにかく数をこなす
 これのみです。判断推理、数的推理、文章理解、資料解釈、そのどれもが数をこなしただけ得点の上がる分野です。テクニックも身につきます。資料解釈も、「表やグラフを読み取るだけでしょ?」と舐めないで、たくさん問題を解いてください。たった3問程度ですが、解法を知っている人と知らない人で、途中計算にかかる時間が全く違います。英文読解もそうです。難しい文章は出ませんが、英単語慣れしているかどうかで読むスピードが全然違います。
 判断推理と数的推理は誰もが「大事」と思っているので皆さんそこそこ問題演習をするのですが、短期間の試験対策で効率的に合格するためにも、知能問題は文章読解と資料解釈までしっかり問題演習を繰り返して、「公務員試験慣れ」するのが一番の近道です。

 

全科目共通の「なんでもノート」を1冊作る

 これは私が実践していたもので、やってみて良かったのでご紹介します。
 参考書や問題集を進めていくうちに、「苦手なところや大事なところをノートにまとめたい」と考える方もいると思います。それは良いのですが、その際、科目ごとに分けるのか、あるいは知識系と知能系で分けるのか、など、ノートの整理に頭と時間を使うのはもったいないです。

 

 そこで、私はノートを1冊だけ用意して、科目も何も関係なく、ノートに書いておきたいと思ったことを思った順に書く「なんでもノート」を作成しました。問題集や参考書で気になった項目だけではなく、白地図をコピーしてそのノートに貼り付けて書き込んだり、模試で間違えた問題を書き加えたり、とにかく「なんでも」この1冊に集約して記録しました。「日付」「模試の名前」「科目」「問題集のページ数」なども書き、細胞の構造やら万有引力の公式やら諸外国の議院内閣制やら・・・とにかく「これは何度も見ないと覚えられないな」と思ったことはその都度日記帳のようにつらつらと書いていきました。そんなの全部書いてたらキリがないのでは?と最初は思っていましたが、やってみると意外とノート1冊に収まります。

 

 結果的に、これはとても役に立ちました。一度書いておくと、同じような問題で間違えた時に「これこの前ノートに書いたよな。でもそれだけじゃこの問題は解けなかったから、新しい情報も書き足しておこう」とアップデートできます。
また、試験当日、開始前や空き時間にサーッと確認するにはもってこいでした。なんせこのノートは、自分が今までつまずいてきた箇所がつまずいた順に書かれている、自分だけの「知識の穴集」になっているわけです。参考書はいくらまとまっていても、自分がもうとっくに覚えている知識も全て載っています。しかしこのノートは、自分がかつて知らなかったところ、何度も間違えて覚えるのに苦労したところだけが載っているのです。試験直前の短時間で総復習するには、これ以上最適なものはありません。

 

本番で解く順番を決めておく

 試験本番までに、何度か模試を受けた方が良いです。理由は二つです。一つは「場慣れ」のため、もう一つは「当日解く順番を決める」ためです。

 

 「場慣れ」のためにも、模試は自宅受験ではなく、どこかの受験会場に出向いて、他の受験生と一緒に受けた方が良いです。私は1回目の公務員試験挑戦(30歳)の時は、2月〜5月頃にかけて4回の模試を受験しました。周りは20代の若い人たちばかりでしたが、ここで場慣れできたことは本番でも生きたと思います。2回目の公務員試験(35歳)の時は、既に本物の公務員試験を受けていたので模試は受けませんでした。

 

 「当日解く順を決める」ためには、模試は会場受験が面倒であれば自宅受験でも良いですし、あるいは本屋で本番さながらの「公務員試験練習パック」のようなものを購入して、自分で時間を計って解いてみるのでも良いです。いずれにせよ、この「当日解く順を決める」という作業は、かなり念入りにやるべきです。これも合格を大きく左右します。

 

 前述の通り、択一式試験は問題数の割に時間が足りません。平均すると1問2〜3分程度でサクサク解いて次の問題に進む必要があります。とはいうものの、それはあくまでも平均であって、実際は知識問題なら30秒〜1分程度、知能問題なら下手したら5分くらいかかってしまう問題もあるかもしれません。

 実際に何回か解いてみると分かりますが、同じ問題数でも、先に知識問題を解くのか、それとも知能問題を解くのかによって、全体にかかる時間が全然違います。短時間でサクサク進む知識系を先に解いた方が合格点に達しやすい人もいれば、時間のかかる問題を先に解いた方が心理的に楽になるという人もいます。これは個人差が大きいです。自分がどの順番に解くのが最もやりやすく、時間配分がうまくいき、高得点を出しやすいのか。何度もシミュレーションして、当日までに作戦を立てておくべきです。
ちなみに私は、練習パックや模試を何度も解き、毎回解く順番を変えて試してみた結果、【一般知識→文章理解→資料解釈→数的推理・判断推理】の順が最も時間切れにならず、余裕を持って臨めました。

 

まとめ

 長くなりましたが、ここまで書いた内容をまとめると、

①捨てる科目を決める。知識問題の苦手な科目は大胆に切り捨てる。知能問題は捨ててはダメ。問題演習を繰り返せば必ず取れるので捨てたらもったいない。

②問題集は1冊を3周解く。知識問題は頻出箇所を探り、知能問題は数をこなすという意識で。

③ノートは科目もジャンルも関係なく1冊にまとめるのがオススメ。

④模試を活用して、当日どの順番で問題を解くか決めておく。

これらを実践することで、教養択一試験との相性が格段に上がります。
私はこうして、仕事をしながら、家事育児もしながら、1日2時間程度(平日も休日も)の勉強を数ヶ月やっただけでしたが、受験した全ての自治体で択一試験を突破できました。
35歳の時は、30歳の時に解いた問題集の✖️印がついているところだけを解いて、3戦3勝でした。それくらい、身につけると長持ちするテクニックで、いわゆる「受かる人はどこを受けても受かる」という体質になります。逆に、それくらい公務員試験の択一式問題は、形式や傾向が独特で、コツがいるということです。
民間企業から公務員への転職を考えている方の、一人でも多くの方のお役に立てば幸いです。

地方公務員試験対策ブログ開設

こんにちは。花戸と申します。

 私は、民間企業から公務員への転職を、2回やりました。その都度公務員試験に挑戦し、突破してきたわけですが、1回目は30歳入庁、2回目は35歳入庁です。住宅ローンを抱えた妻子持ちですので、仕事を続けながら、また育児もしながら、隙間の時間で試験勉強をしました。

 1回目の受験を決心した当時、公務員試験について色々調べてみたところ、意外とネット上に出回っている情報量が少ないと感じました。特に面接や小論文試験の実例については、情報収集にだいぶ苦労しました。ですので、この花戸塾では特に、民間企業から公務員に転職しようとしている方向けに、公務員試験突破のヒントとなるような情報を書き連ねていこうと思います。ただ、エントリーシートの書き方から面接対策に至るまで、一連の対策については新卒者の方にも通じるところも多いかと思いますので、試験突破の一助となれば幸いです。

 私は大学卒業後、医療系の民間企業に就職しました。そこで勤務していくうちに自治体の保健所とやりとりする機会が増え、そのやりとりがあまりに納得のいかないものであったり、非効率的・非合理的であったり。「一体コイツら公務員って何を根拠にどんな仕事してんの!?」と思ったのが、最初に公務員の仕事に関心(?)を抱いたきっかけです。その後、調べていくうちに、意外と誰でも何歳からでも公務員試験を受けられるということや、福利厚生が非常に手厚いということを知ります。

 最初は、「公務員になるならやっぱ国家公務員でしょう!」と思って調べてみましたが、どうも大変そう。面接試験は官庁訪問とか言って何度もあるみたいだし、総合職は筆記も難しそうだし。入庁後は全国転勤もあるし、終電無くなるまで残業なんてザラにあるみたいだし。それだと子育てにも参加しにくいし、無理して転職しなくても良いのでは?
 しかも、給料がそんなに高くない。ヘタしたら地方公務員より低い。これはよほどの信念や熱い思いがないとやってられなさそう・・・。

 ならば地方公務員になろう!都庁、県庁、特別区(東京23区)、市役所。志望先の選択や試験対策等の詳細は次回以降の記事で書きますが、結局私は1回目の公務員では横浜市役所に入庁しました。3年間勤めて退職し、民間企業に戻り、2回目の公務員転職ではお隣の川崎市役所に入庁しました。この時は神奈川県庁からも最終合格を頂いていたので迷いましたが、結局再び政令市を選択し、2年間勤務しました。

 私は今となっては民間人です。公務員試験を複数回受験し、複数回合格し、2回入庁し、2回退職しております。このブログでは、いち子育て中のサラリーマンがどのように筆記試験対策をし、面接対策をし、合格するには何が必要で、実際に地方公務員として働いてみてよかった点や悪かった点、なぜ辞めたのか等、なるべく本音で記していこうと思っています。

どうぞよろしくお願いいたします。

花戸